2010年代(2010〜2019年)
邦楽
象徴するアーティスト・曲
- AKB48「ヘビーローテーション」「恋するフォーチュンクッキー」ほか(2010〜2015年)
「握手券」「総選挙」というイベント型ビジネスモデルでCDセールスを独占。CDの売上指標の意味を根本的に変えた存在。
- 嵐「Troublemaker」「Happiness」ほか(2010〜2019年)
ジャニーズの中核としてCD売上1位を連発。2020年の活動休止まで、テレビとCDの力を最大限に活用したグループ。
- 米津玄師「Lemon」「馬と鹿」ほか(2018〜2019年)
ボカロP「ハチ」出身。「Lemon」はストリーミング再生数で歴史的記録を樹立し、ネット文化と大衆文化を架橋した日本を代表するアーティスト。
- Official髭男dism「Pretender」「宿命」(2019年)
ストリーミングチャートで一気にブレイク。高い音楽性でCDではなく配信で勝負する新世代バンドの象徴。
- RADWIMPS「前前前世」(2016年)
映画『君の名は。』の主題歌として社会現象に。アニメ映画と音楽のタイアップがJ-POPの新たなヒットモデルとなることを証明。
音楽産業の転換点
- CDセールスの二極化:AKB48グループとジャニーズがCD売上の大半を占め、「握手券」「投票券」などの特典商法がセールスの主要因に。CDの「音楽メディア」としての意味が形骸化した。
- ストリーミングの上陸と浸透:Apple Music(2015年)、Spotify(2016年日本上陸)の開始。Billboard JAPANがストリーミング指標を導入し、「CDが売れなくてもヒット」を可視化できるようになった。
- ボカロP→メジャーアーティストのパイプライン:米津玄師(ハチ)、DECO*27、n-bunaらボーカロイド文化出身のクリエイターがメジャーシーンに進出。ニコニコ動画/YouTubeが新たな音楽人材の育成場として機能した。
- アニメタイアップの再評価:2016年の『君の名は。』成功以降、アニメ映画/TVアニメ主題歌が大ヒットの重要なルートとして再認識された。
文化的背景
東日本大震災(2011年)が日本社会に深い傷を残し、音楽にも「絆」「希望」をテーマにした楽曲が増えた。一方でスマートフォンの爆発的普及(2010年代前半)とSNS(Twitter、Instagram、LINE)が情報の流通を根本的に変え、音楽の発見・消費も「テレビ」から「ネット」へ。2019年には令和改元を迎え、平成という時代の音楽の総括が行われた。
年代の変遷
2010年は嵐がオリコンTOP5を独占し、AKB48も4曲ランクインと、CDセールスがアイドルに一極集中したチャートだった。2019年にはOfficial髭男dism「Pretender」やKing Gnu「白日」がストリーミングチャートで上位を占め、CDランキングとストリーミングランキングが全く異なる顔ぶれになった。音楽の「ヒット」の定義そのものが変わった10年間。
洋楽
象徴するアーティスト・曲
- Drake「God's Plan」「Hotline Bling」ほか(2010〜2019年)
2010年代を通じて最も多くのチャートヒットを記録。ラップとR&Bの境界を溶かし、ストリーミング時代の覇者となった。
- Taylor Swift「Shake It Off」「Blank Space」ほか(2010〜2019年)
カントリーからポップへの転身で世界的スーパースターに。Spotify撤退(2014〜2017年)でストリーミングの権利問題を提起し、音楽産業の構造に影響を与えた。
- Adele「Rolling in the Deep」「Hello」(2011年、2015年)
アルバム「21」「25」がそれぞれ数千万枚を売り上げ、ストリーミング時代にもフィジカルセールスの力を証明。
- Ed Sheeran「Shape of You」「Thinking Out Loud」(2014〜2017年)
ループペダル1つで世界のスタジアムを埋めるシンガーソングライター。ストリーミング再生数でも歴史的記録を樹立。
- Billie Eilish「bad guy」「everything i wanted」(2019年)
17歳でグラミー主要4部門制覇。自宅の寝室録音という制作スタイルで、DIY音楽制作の可能性を示した。
音楽産業の転換点
- ストリーミングの台頭と支配:Spotifyが2011年に米国上陸、2015年にApple Music開始。2017年にはストリーミング収入がフィジカル販売を上回り、音楽産業の主要収入源に。
- EDMのメインストリーム化:Avicii、Calvin Harris、David Guettaらがポップスとエレクトロニック音楽を融合。Ultra、Tomorrowlandなどフェスの巨大化がEDMの成長を牽引した。
- ヒップホップの完全なる支配:2017年にヒップホップ/R&Bがアメリカで最も聴かれるジャンルに。Kendrick Lamar「DAMN.」がピューリッツァー音楽賞を受賞(2018年)し、芸術的な評価も確立。
- ソーシャルメディアの影響力:YouTube再生数がヒットの指標に(PSY「Gangnam Style」2012年、10億再生の壁突破)。Instagram、Vine、そしてTikTok(2018年〜)がアーティストのブレイクに直結するようになった。
文化的背景
Black Lives Matter運動(2013年〜)、#MeToo運動(2017年)など、社会正義への意識が高まった時代。Kendrick Lamar「Alright」がBLMの非公式アンセムとなるなど、音楽と社会運動の結びつきが強まった。Brexit(2016年)やトランプ大統領就任(2017年)など政治的分断が深まる中、音楽はしばしばメッセージの発信手段として機能した。
年代の変遷
2010年はKesha「TiK ToK」やKaty Perry「California Gurls」というエレクトロポップがチャートを支配。2019年にはLil Nas X「Old Town Road」がカントリー×ヒップホップでジャンルの壁を破壊し、Billie Eilishが寝室録音で世界を席巻。10年間でCDは完全にストリーミングに取って代わられ、TikTokの登場は2020年代の音楽シーンを決定的に変える予兆だった。